波の上の魔術師/石田衣良 | デジタル編集者は今日も夜更かし。

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出版社に在籍していながら、仕事はネット、携帯などデジタル企画のプロデュース。

もし雑誌をやっていたら記事にしたかもしれない様々なネタを、ジャンルにこだわらずコラム風に書いてみる。アナログ志向のデジタル編集者は、相も変わらずジタバタと24時間営業中!

一陽来復


日経平均が6年9か月ぶりに1万8千円を超えた。


ボクは数年前から、少しだけれどネットで株をやっている。
いわゆる“ゴミ投資家”。
競馬やパチンコ、宝くじといったギャンブルにはまったく興味がないのだが、ボクの株投資は利殖と言うよりはゲームの感覚に近い。これが、かなり楽しい。


もちろん、株をやるのは儲けるためではあるのだけれど、確率からすれば、マジメに日々働いていて給料をいただいた方が確実ではある。
着実に生きていくための収入源を確保した上で、そこから捻出したほんの少しの余剰金を、ネット証券の口座に入れて切り離し、株投資というゲームで遊ぶ。


株は簡単に言えば、騰がるか、下がるかの2分の1を予測して投資をするワケだが、当然ながらそんなことが分かるわけがない。人には5分後の未来も、分からない。
昨日の日銀の短期金利引き上げの発表で、もし、今日の株価を予測できていれば確実に儲かったわけだが、逆に下がるという予測ももちろんあったのだ。全ては結果論。


それでも株価のチャートをみていると、世間の流行や、ニュース、時にはウワサなど、つまり世の中と連動しながら騰がったり下がったりする波を繰り返し、それが大きなうねりとなって見えてくることがある。
銘柄によってそのうねりには特徴があり、一日の波、一週間の波、一か月の波が掴めると利益を出せるようになる。


『波の上の魔術師』は、そんな相場の世界を舞台にしたエンタテインメント。
2001年発行で、すでに文庫化も、長瀬クンと植木等でテレビドラマ化もされているが、株友だちに貸してあげたのを機に、再び読んでみた。
相場の波を読み切りながら、巨悪に立ち向かうちょっと歪んだ正義の味方。
こういう話、じつは大好き。
スッキリ痛快で、ちょっとホロリとして、しかもモチベーションが上昇する。


今年の節分の日、早稲田にある穴八幡宮の「一陽来復」のお守りをリビングの隅に貼った。
これは、金融融通のお守りともいい、つまりは儲かるおまじないなのだ。
しかも!
このお守り、冬至、大晦日、節分の3日のウチ都合の良い日を選び、
その日の夜中十二時に、その年(翌年)の恵方に向けて、
家のなるべく高い位置に貼らなくては効果がないという。
さらに、さらに、一旦祭ったお守りは一年間動かしてはダメで、引っ越しなどでやむを得ず外すときは、神社に納めよ、と言われる。
こういうのは、ハードルが高いほど、御利益があるように思えてくるから不思議だ。
去年の内に用意してあったのだが、冬至の日も、大晦日にも貼るチャンスを逃し、節分が今年のラストチャンスだった。


事前に、家の中心を定め、方位磁石で今年の恵方、亥子(真北から少し西寄り。北北西ではない!)に表面を向けて、反対側のなるべく高い場所に貼る位置を決める。ゼッタイに剥がれて落ちないように木工用ボンド片手に、夜中十二時の15分くらい前から待機した。
電波時計を横目でにらみながら、何度かシミュレーションして、いざ、パシッと貼る!
緊張するなぁ。
これが、交通安全とか、健康とか、命や人生そのものに関わるお守りなら、ボクは手を出さないな。“金銀融通”だから、ある意味気軽にできること。


このところの株価上昇。
ほ~ら、さっそくに御利益が現れた♪ とお気楽に思えるのだ。

ボクにとって株はギャンブルだし、ゲームだ。だから楽しいし、リスクもある。
良い子は手を出さない。ボクは少し悪いコなので、こんな楽しみも知っている。


ちなみに、余剰金で始めた株取引のボクの目標は、生涯賃金を稼ぎ出すことである。
無理、だと思う?


■波の上の魔術師/石田衣良■