究極のインテリア。 | デジタル編集者は今日も夜更かし。

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出版社に在籍していながら、仕事はネット、携帯などデジタル企画のプロデュース。

もし雑誌をやっていたら記事にしたかもしれない様々なネタを、ジャンルにこだわらずコラム風に書いてみる。アナログ志向のデジタル編集者は、相も変わらずジタバタと24時間営業中!

假屋崎省吾


2002年にNHKハイビジョンのドキュメンタリーで、初めて假屋崎省吾 が花を活ける姿を見て以来の、彼の作品のファンである。


それ以前は、あまり作り込んだ花が好きではなかった。
詳しくはないので、イメージだけなのだけれど、
流派でいえば、草月流よりも、池坊。
花器も九谷や伊万里の絢爛さよりも、志野や唐津。
庭でいえば、幾何学的に設計されたフランス庭園よりも、一年草が混在するイングリッシュガーデン。
ロココ調の猫足家具よりも、シンプルな北欧家具。
花は、薄暗い茶室の一輪挿しにコスモスなんかがすっと差してあればいいはないか、と思っていた。


ところが、目黒雅叙園に残る『百段階段』、昭和の竜宮城とも呼ばれる歴史的建造物のなかでも最も絢爛豪華な“漁樵(ぎょしょう)の間”に調和する花を活ける、假屋崎さんの真剣勝負をドキュメンタリーで見てから、それまでとは正反対な美への興味が湧いてきたのだ。


『百段階段』は昭和10年に完成、時代を経て、ちょうど良い感じに古びて一見の価値がある建物だが、螺鈿や金泥も贅沢に色鮮やかな日本画で彩られた天井、彩色された浮き彫りの柱、手の込んだ建具などで贅を尽くした様式で、もうそれだけでボクの趣味ではないのだ。
“漁樵の間”はそのなかでも全面浮き彫りを施された床柱などひとつ間違えれば悪趣味にもなりかねない和の豪華さで、微妙なバランスで美を主張している。
そこに飾る花とは?
既に完璧にできあがった空間に、さらに重ねて花を活ける。
百段階段に繋がる6部屋を舞台に、今年も、假屋崎さんの作品が飾られる。
目黒雅叙園『華道家 假屋崎省吾の世界』。 テーマは、“華で寿(ことほ)ぐ”。


繊細というよりも大胆。可憐というよりは豪華。

めちゃめちゃリュクスな世界。
自然を借りてきて部屋に野山への窓を作るのではなく、
花や植物を狩り取ってきて閉じられた人工的な空間に、新たに自分の美を創り上げていく。
ものすごくアグレッシブである。
ずっと見たかった“百段階段VS.假屋崎省吾”のバトルは、期待に違わず楽しかった。
ふと、假屋崎さんの作品がない百段階段の各部屋をイメージしてみる。
きっと、まったく異なる印象になるんだろう。
床の間や飾り棚だけではなく、部屋そのものの空間に影響を与える生け花の世界。
なんだか、スゴイ。
あまり考えたことはなかったのだけれど、自宅のインテリアとして花を飾ることを想像してみる。
なんだか、いいかも。

やはり野におけ、すみれ草…とは基本的には思うけれど、才能によって開花する華もある。
基礎的な技術と知識を学ぶために、教室に通うことを、いま結構真剣に考えている。


■目黒雅叙園『華道家 假屋崎省吾の世界』(11/12 SUN.まで)
http://www.megurogajoen.co.jp/event/061028.html
*観光バスで押し寄せるおばちゃんたちの歓声がスゴイので、その波をやり過ごす時間とココロの余裕がある時にぜひ。

しかし、假屋崎さんの作品と、おばちゃんパワーはよく似合う…。