あと、10万人。 | デジタル編集者は今日も夜更かし。

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ほぼ一年前、ボクは骨髄移植のドナーになった。

骨髄バンクに登録して約10年、2回目の適合通知でようやくチャンスをもらったのだ。
91年末の骨髄バンク設立から13年間(1992年-2005年3月実績)で累計ドナー登録者約26万人。そのなかで延べ6,341人が骨髄提供をしている。2.4%の、選ばれし幸せ者だ。ボクもようやくその仲間に加わることができた。

骨髄移植は、白血病などの血液難病の患者さんの命を救うための非常に効果的な方法のひとつだが、白血球の型(HLA)が適合しないと移植をすることはできず、患者さんが公平に移植を受ける機会を得るためには、30万人のドナー登録者が必要だという。

ボクが登録をした10年前、ドナー登録者は、5万人しかいなかった。
それが啓蒙活動、ボランティア意識の変化や小説・映画などの影響もあって、登録者はようやく20万人を超えた。それでも、まだ10万人足りない。

検査やら自己輸血のための血液採取やら、弁護士立ち会いの最終意思確認やらにも出向かねばならず、ひとりの患者さんの命を救うためだから、それだけドナーの負担は大きい。
骨髄幹細胞採取手術は、全身麻酔だし、導尿カテーテル入れられるし、4日間程度は仕事を休んで入院しなくてはいけないし、退院後もしばらくはまともに歩けないほど痛いし、ボランティアだから当然なんの報酬もない。

でもね、それを超える喜びがドナーにはある。
昨年手術の日程が決まったころ、“セカチュ―”の試写を見て映画に感動した知人が、「でも、あなたは亜紀ちゃんを救えるんだね」というメールを会場から送ってくれた。
ね、これだけでうれしいでしょ?

あれから一年経って、腰に4か所あった採取の跡も薄れてしまった。鏡で見るとなかなかキュートだったのに。術後は半端じゃなく痛かったはずなのだが、その記憶もあやふやになってきた。
それでも、提供をしたという満足感は今でも変わらない。これは、一生ものの幸せな記憶。

骨髄提供をすると、その後一年間ドナーとしての登録は保留となり、提供はできない。
先日その保留期間が過ぎて、登録意思確認の書類が届いた。
気持ちは決まっていたけど、もう一度ゆっくりと考えて、やっぱり登録を継続することにして、今日返事を投函した。
ボクにまたチャンスが来るかどうかはわからないけれど、あと、10万人。

骨髄移植のドナーには危険も伴うから手術には家族の同意が必要だ。それに、なんといっても痛い。もちろん、ずっと選任のコーディネーターがついて、十分に説明やサポートをしてくれるのだが、せっかく適合ドナーが見つかっても、家族の反対にあって提供に至らない例もあるという。
だから、ボクは安易にドナー登録を勧めるつもりはない。自身の絶対的な健康が必須だし、責任も重い。
あちこちのブログを見ていると、AD SPACEに、日本骨髄バンク/ドナーズネットの広告がでていることに気がつかれることだろう。少しでも興味があったら、覗いてみてほしい。ドナーにならなくても、命を救うためにできることはある。
ボランティアは、幸せのお裾分け。できることからね。
もちろん、手を貸してあげるべき存在は、白血病の患者さんに限らない。

でもね、骨髄移植でイチバン幸せを感じているのは、ボクを含めて約6,500人のドナーなんだと思う。気持ちイイよ。

*もし、興味があったり、登録したいけど不安がだったりする方がいたら、タイトル下のメールアイコンからメッセージください。何でも正直にお答えします。
写真は、手術直後。まだ半覚醒状態。生まれて初めての、手術、入院、点滴です。